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ロシヤ極東ハバーロフスク市在住  岡田和也 Kадзуя_Oкада

 久田さん、第一信を書かせていただいたのが2003年1月1日ですから、あれから1年あまりが過ぎたのですね。もっと時が経ったようにも思われます。数年前、銀座で10数年ぶりにお会いしたときには、ロマンスグレーの髪をしたナイスミドル然とされているご様子に時の流れをかんじましたが、昨日床屋で胸元に散るじぶんの白髪の多さに改めて気づかされ過ぎ去りし年月をかんじたことでした。
 どうか一文を、とのお声がいつも耳の奥でしていまして、仕事が一段落した今日は思いきってなにかを綴ってみようと思いました。
 まだ私が日本にいた頃、いつものようにグルジヤの赤ワインを一瓶持って筑波大でのワークショップに出かけていきますと、山海塾の舞踏手の岩下徹さんが、その壜をしずかに手にとってガラスの継ぎ目に触れて、このずれがなんともいえない、というようなことをぽつんと言われたことがありました。いつもその壜の継ぎ目に心惹かれていたのではと思います。
 昨秋、地元の沿アムール報知という日刊紙に"コップに乾杯"という見出しのちいさな記事がありました。ソ連を放浪されてグルジヤですばらしい呑み友だちにめぐりあわれた久田さんならご存知と思いますが、よく食堂などにあるガラスが厚く縦に細長い面のある多角形の安コップ гранёный стакан が生まれてちょうど60年が過ぎたという内容でした。60年前といえば1943年ですが、この大衆的な耐熱コップのデザインは、なんと、1937年のパリ万博に出展された24メートルの大作でソ連映画の冒頭にでてくるあの「男性労働者と女性コルホース員」像の作者、女性彫刻家のヴェーラ・ムーヒナが、芸術ガラス工房の長をつとめていた封鎖されたレニングラードで考案したものなのだそうです。うちにもこのコップがありまして、燻し銀のグラスホールダーといっしょにしてあるのですが、手にとってながめてみると、すこし重みがあって佇まいが素朴でなかなかすてきです。数えてみるとカット面は16で、コップの底には8Б С 3 0 Ц 14 К とあります。先日、日本の留学生の方に伺ったところ、今も食堂 столовая でよく使われているそうです。ハバーロフスクでも、牛乳瓶はみかけなくなりましたし、コップをはじめ使い捨てのものがだんだん増えているような気がしますが、このムーヒナのコップはずっとあってほしいなあと思います。 
 久田さん、音楽はお好きでしたか。私はクラシックが好きで、1989年にこちらの放送局に入局して、たしか最初の給料でソ連製のレコードプレーヤーを買いました。前から目につけていたものを買ったのですが、大きいスピーカーが2つついているもので、冬でしたけれどうちまで運ぶのに大汗を流しました。相撲をとっているような恰好でデパートからバス停まで運び、バスの中にやっと押し込み、バス停からうちまで雪のうえを押したり引いたりしてなんとか運んだものでした。針がいかれてしまってからはしばらく埃をかぶっていたのですが、ある部品屋で針をみつけてまたクラシック音楽にひたりはじめました。ひとつひとつの作品を三省堂の音楽作品名辞典で確認しながらレコード番号順にレコードを回していくのでしたが、ある日、メインパワーのスイッチを押してもターンテーブルが回らなくなってしまいました。あれこれいじっていると感電したのでもうあきらめて修理にだすことにして街を歩きまわったのですが、テレヴィやヴィデオや洗濯機などを修理するところはあっていても、レコードプレーヤーの修理をやっているところはみつからないのです。しかたないので同じ職場の電気技師のジェーニャに診てもらおうと思っています。それにしても、レコードプレーヤーも蓄音機と同じ運命をたどりつつあるようですね。CDプレーヤーもありますが、やはりレコードに針を落として聴きたいものです。棚に並んでいるレコードがどこか淋しげです。
 今回も他愛のないお便りとなってしまいました。こちらも仄かに早春がかんじられます。一週間後の22日は、冬送りの祭り、マースレニッツァ масленицаです。今年はでかけてみようかなと思っています。
 久田さん、どうぞお元気で。
 感謝とともに。


 



シベリヤ私信(2)2004.02.14

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Kадзуя_Oкада  岡田和也
シベリヤ私信 NO.2 (15.02.'04)
Часная  корреспонденция  из Сибири































































 














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