六花(РИККА)春(14)号

ハバロフスク日本人会会報    りっか 六花 рикка      2005春・Vol.14


                          ☆長内敬総領事へのインタヴュー☆

 2004年10月7日、当会役員一同による長内敬総領事表敬訪問のあと、総領事にインタヴューをさせていただきました。以下にその内容を掲載させていただきます。聴き手は、ロシヤ国営ラヂオ放送局「ロシヤの声」ハバーロフスク支局特派員のエカチェリーナ・メシチェリャコーヴァ岡田和也です。



Q:ロシヤ語はどちらで学ばれましたか? ロシヤへの憧れのきっかけは?

A:ロシヤ語は、外務省に入ってから勉強しました。最初イギリスの大学で2年間勉強し、その後モスクヴァ大学で1年勉強し、都合3年勉強して、モスクヴァの大使館で勤務を始めました。外務省に入ると、自分の専攻する言葉、専門とする言葉を決めるわけですけれども、わたくしがそのときロシヤ語を選んだのは、やはり、ロシヤは、当時はソ連でしたけれども、日本の隣の国でありますし、当時隣の国とはいえそれほど日本によく知られてない国だったわけです。ですから、やはり隣国ソ連、今のロシヤをできるだけ深く知りたいと、そう思いまして、ロシヤ語を勉強することにし、ロシヤを専門とする外交官になろうとしたわけです。

Q:ソ連およびロシヤとの外交において、どのようなお仕事をなさってこられましたか?

A:わたくしは、モスクヴァの日本大使館に3度勤務しました。最初が、先ほど申しましたモスクヴァ大学での勉強を終えた後、80年から81年、1年間の勤務。それから2回目が、90年から93年にかけて、ソ連がロシヤに変化していく時代の勤務。それから3度目が、2002年から今年2004年の9月まで、モスクヴァの大使館で勤務しました。そういうように、ブレージネフ書記長時代のソ連、それから、ゴルバチョーフ大統領のソ連からエーリツィン大統領に代わっていくロシヤ、それから、プーチン大統領の政権下のロシヤ、と3度勤務し、さらに、東京、日本の外務省では、主にソ連・ロシヤ関係をやってきました。やってきたことは、ソ連・ロシヤとの2国間関係。政治問題にしろ、経済問題にしろ、いろんな問題がありますけれども、2国間の問題を主として今までやってまいりました。

Q:これまで総領事はモスクヴァに駐在されてこられましたが、ここロシヤ極東のハバーロフスクのご印象はいかがでしょうか?

A:わたくしは、ハバーロフスクに、1995年ごろに1度、出張してきたことがあります。そのころのハバーロフスクと今を比べますと、以前のようにいかにもロシヤらしい雰囲気というものを維持しながら、10年前と比べてそうとう活気のある新しいことがこの町でも起こりつつあるな、そういう印象をもっております。

Q:奥様のハバーロフスクのご印象もお聞かせいただければ幸いです。

A:家内は、初めてハバーロフスクに来たわけですけれども、ひじょうにこの町を気に入った、と言っております。やはり、なによりいいのは、この町がいかにもまだロシヤらしい雰囲気のある町であること。さらに、来てから2週間くらいしかたっておりませんけれども、そのあいだ毎日素晴らしい天候の日々が続いていて、朝起きるといつも青空が広がっているわけですから、毎日快適な気分ですごせる、そういうこともあって、ひじょうにこの町が家内は気に入っております。


Q:総領事としてのこれからのご活動で重きを置かれます点は?

A:今、日本とロシヤは、いろんな分野で、政治、経済、文化、あるいは、国際問題での協力、いろんな分野で、ひじょうにいい方向へ進んでおります。これからも、東京とモスクヴァとの関係だけでなくて、日本と極東・東シベリヤの地方との関係でも、いろんな分野でこれから関係が発展していくように、わたしもできるだけのことをしていきたいと思っています。

Q:具体的に文化交流事業としてはどのような催しが予定されていますか?

A:わたしが来てから、つい1週間ほど前、ここで日本の文化のひとつである折り紙展がありましたけれども、今月半ばには、今度は、ロシヤ人の方々で日本語を勉強している方のスピーチコンテストがあります。それから、今後具体的なイヴェントとしては、日本の古典的な楽器である箏のプロフェッショナルの方たちがこちらに参ります。そうした演奏会もあります。日本とハバーロフスク、これだけ近いですから、これからもいろんな形での文化活動が、ハバーロフスクあるいはこの極東を舞台に展開されると考えております。

Q:余暇には何をされていますか? ご趣味は?

A:モスクヴァにいたときは、テニスをしたり、ゴルフをしたり、それから、フィットネスクラブに通ったり、そういうスポーツをしてましたし、あとは、シーズンになると、演劇、オペラを観にいったり、コンサートにも行ったりしてました。ここでも、同じようなことができればな、と思っています。

Q:先日(10月3日)ロシヤ極東交響楽団の今シーズンの幕をあける演奏会でお見かけいたしましたが、コンサートはいかがでしたか?

A:モスクヴァを離れて久方ぶりにコンサートを聴きましたので、ひじょうに楽しく時間をすごさせていただきました。このあいだの演奏会では、とくにスクリャービンのピアノコンチェルト、素晴らしかったのを憶えています。

Q:総領事は普段ロシヤ料理も召し上がりますか? それと、お好きな食べ物とか飲み物はおありでしょうか? 

A:家庭で食事しているときは、まあだいたい日本食が主ですけれども、もちろん、外に出かけたときはロシヤ料理を食べます。妻もわたしもロシヤ料理は大好きです。ここにいてわたしが普段飲んでるのは、ビールとかワインですけれども、ロシヤ人の方とご一緒の時は、ウォッカも、まあ以前ほどではないですけれども、よく飲みます。

Q:総領事、本日はどうも有り難うございました。

A:どうも有り難うございました。


                          ☆鈴木宣平さんよりご投稿 第7弾 ☆

                                   ズロース一丁 こんにちは!

 学問に王道は無い、と言われていますが、近道を見つけるに越したことはありません。 「ロシア語早覚え」の極意をご一緒にどうぞ。
私は今も英語が苦手ですが、習い始めた中学1年以後何が苦手といっても文法はともかく、英語はまともに読めない、書けない、もう苦手でした。 こうしてグズグズしていた或る日、教壇の先生がおっしゃった一言「anniversary」の意味を「兄がバッサリ殺(や)られた日 − 記念日」と覚えたら、これが62歳になった今でも忘れられません。
 
 こうしたゴロで露語も出来ないか、といつも考えていました。 これが実現し始めたのがソ連木材商売の真っ最中で、その人はたまたま自分の上司、しかも直接の課長じゃなく、雲の上の木材部長、しかも米材出身のロシア語はハラショ−しか知らない部長のT。 ある日このT部長がソ連材課に突っ込んできた。 ソ連通商代表部の副首席と食事することになった、簡単なロシア語を今すぐ教えろ、とのこと。 王道は無い、と声高に言いたいところ、それはそれ木材部長、日頃集めておいたゴロを教え込んだ:
ヤ、ハラショー、ネ ハラショー、ダー、ニェットは知ってるものとして、

[初対面]

ズロース一丁
  Здравствуйте     こんにちは!

おうちにプリンやと  Очень приятно   はじめまして!

確実に?  Как жизнь?   いかがですか?

さぁ 爺い チェス  Садитесь お座りください

[食事中、食後]

複数!  Вкусно! おいしい!

パリ好き  по-русски ロシア語で

8っ本好き по-японски 日本語で

泉にて  Извините ごめんなさい

番茶入りコーヒー?  Вам чай или кофе? 紅茶ですかコーヒーですか?

[お別れ]

嫌(や)〜だ もぅ!  Я домой! 私 帰る!

ど助平だにゃ〜  До свидания! さようなら!

デブ鹿  Девушка ウエイトレス、お嬢さん

一寸(ちょっと)抱いて  Счёт дайте. お勘定してください

  この他「窓は開くの〜」、「やんわり正月」、「新座、首都(не за что)」、「首都の馬場?(Что нового?)」などがありますが、上記の表をなんとなく覚えといて欲しい、と要請。 ところが、私も通訳の一人として同行させてもらったところ、出だしでつまずいてしまいました。 なんとT部長は副首席に向かってまじめな顔をして堂々と「ズロース1枚(いちまい)!」と声高に言い放ったのです。 相手はキョトンとするし、私は社会的立場が無いし、急遽全面通訳まかせに切り替えました。 このまま放っとくとお嬢さんを「デブ豚」と言いかねません。
   
  語呂合わせでロシア語を募集しています。 この欄でも応募してください。(鈴木宣平)


                             ☆六花版/HPの森☆

http://www.comicbox.co.jp/norshtein 映像詩人ユーリー・ノルシュテイン(2004年秋、旭日小綬章受章、編集者註)の公式HP。

http://www.laputa-jp.com/ノルシュテイン情報サイト「ユーリー・ノルシュテインの仕事」

http://www.terminal-movie.jp/ ハリウッド映画「ターミナル」(主演トム・ハンクス)では、ハンクスによる主人公役ビクター・ナボルスキーの祖国は、東欧にある国「クラコウジア連邦」!!!
                           
(以上3件、富山市の小林浩さんの情報)

 前号で紹介させていただいたドイツ映画「グッバイ・レーニン」(http://www.gaga.ne.jp/lenin/ http://www.79qmddr.de/ )では、主人公の恋人役を、なんとモスクヴァの劇場「ソヴレメーンニク」の女優チュルパーン・ハマートヴァが演じています。わりと最近テレヴィ映画「アルバートの子供たち」にも出演していましたが、先日の地元の新聞にインタヴューが掲載されていました。以下、抄訳です。
― チュルパーンという名前はなにを意味しますか?
― なんにも、それは芸名です。映画に出演し始めたとき、鮮烈でエキゾチックなものが必要だと、わかりました。俳優にはファンタスティックで記憶に残る名前が必要だ、と。
それで、友だちと、チュルパーンという、忘れられないまったくおかしな芸名を思いついたのです。苗字は変えませんでした。
― あなたはカザーニで生まれたのですか?
― いいえ。そこには住んでいたことがあります。でも生まれたのは、残念ながら今はない別の街です。その町は、洪水で流されてしまったのです。けれども、冬になると赤く染まる楓をよく憶えています。木がそんなに赤く染まるのは、ほかにありません。まあカナダくらいでしょう。ひびが入ったモダニズム様式の建物の壁を憶えています。今、そこで、とても月並みでどこかモスクヴァを思わせる新しい町のさかんな建設が行なわれています。それは、きっと、誰かを喜ばせているでしょうけれども、私を、ではありません。
― 舞台以外の実生活はどんなですか?
― 実生活では私は別人です。私の目は青く、髪は稀にみる美しくない髪です。けれども、チュルパーンという名まえからくる神秘に合わせて、茶色のレンズを嵌め、鬘をかぶらなくてはなりません。
― 多くのインタヴューで、あなたは、モスクヴァをローラースケートで移動すると話していましたね。
― ええ、ローラースケートはとても便利ですね、とくに冬は。そもそも、私は、障害が好きで、いつもそれを克服しています。冬にローラースケートで劇場まで行くのはたいへんで、最低3時間ついやします。私は、《ソヴレメーンニク》のほど近くに住んでいまして、歩いて5分のところを3時間かけて行き、生活の大きな充実感を味わっています!
― 道路を、それとも、歩道を走るのですか?
― より困難なほうで、車道がきれいだったらきれいでない歩道を選びます。歩道のほうがきれいになれば、車道に出ますね。
― ファンはあなたをどうやって追いかけますか?
― なにかに乗って。スキーで、ローラースケートで、徒歩で、車で追い越していきます! 私の背後からいろんなことを叫びます! そして、それが、私の生活でもっとも幸せなときですね。

http://www.khabarovsk.ru.emb-japan.go.jp/ 在ハバロフスク日本総領事館。当地の情報満載。

http://hisgan.fc2web.com/ 「六花」のバックナンバーが読めるサイト。
http://hisada.blog3.fc2.com/も始めましたのでどうぞ。(職権濫用?)ヒサダ加筆

・この欄、常設にしたく存じます。掲載ご希望の方お気軽にokada@pop.redcom.ruまでご連絡ください。


                                ☆暮らしの情報☆

◎ブドウ黒パン。250グラムの小型の黒パン。黒パンにしては柔らかく食べやすい味のパンです。茶色の横楕円形のレッテルには、「ХЛЕБ ЗАВАРНОЙ АМУРСКИЙ КУПЕЧЕСКИЙ」という商品名が大きく、「ЗАО"АРТЕЛЬ СТАРАТЕЛЕЙ "АМУР"」というメーカー名が小さく、記されています。

◎窓ガラス。ガイダール児童公園の角を、ムラヴィヨーフ・アムールスキイ通りからガイダール通りへ曲り、そのまままっすぐ進み、キム・ユ・チェン通りを渡ると、右手に家具や雑貨を扱う大きなお店《ТЫСЯЧА МЕЛОЧЕЙ》が現れます。さらにそのまま緩やかな坂をくだっていきますと、右手に工事現場が見えてきます。その出入り口付近に、《ガラス切り(РЕЗКА СТЕКЛА)》と書いてあるトレーラーハウスのような小屋があり、そこでガラスを売っています。予め測っておいたガラスの正確なサイズを伝えるだけで、すぐにカッターと細長い木片でガラスを切ってくれます。ちなみに、私が求めたのは537×753ミリメートルの台所の窓用のガラス板で、110ルーブリでした。



          ☆山下雅司さんの小説「時空の旅人」(新風社主催第22回出版賞最終選考作品)☆

                                    <連載第1回>
        
         序章

 宇宙に漂う原子や分子の動きが突然、活発になり闇の世界で躍動し始めていた。
それは暗黒の世界で密やかに、自然と一つの塊へと姿を変えつつあった。
まさにそれは神秘と呼ぶに相応しい、宇宙の星の誕生とも言える動きであった。
 其の位置はアンドロメダ銀河の北北東方向で、丁度地球から眺めると太陽の裏側にあたり、勿論、地球上の最先端の望遠鏡でも其は捕らえる事が出来なかった。
 暗黒の静寂の中で、無気味な形の巨大な暗黒星雲となる形が造られて行った。
 何時の間にか暗黒星雲は信じられない速さで重力が収縮して行き、太陽の大きさを数倍上回る巨大な原子星ガス円盤へと変化していった。普通は数百万年はかかると言われている現象が、奇妙な事に数時間の内に急激に変化して行った。
 宇宙の彼方で起きた怪奇現象で、総てそれは人類の与り知らない世界の出来事だった。
 やがてそれは、淡い水色の尾を引く高温ガスのジェットを噴き出しながら、銀河系に吸い込まれる様に、一人前の星として成長しながら動き始めた。其の中には三個の星が連なる、三重星と呼ばれる連星系が誕生していた。
 八百光年の距離まで太陽系銀河に近づいた時、三重星の内の一つの星が飛び出し、まるで吸い込まれる様に太陽に向かい進み始めた。人知れず宇宙に異変が起りつつあった。
 遠い宇宙の神秘的な現象と思われていた異変が、一つの新星の卵が太陽に激突する事で、宇宙の真理が狂い始める事などあり得る事なのだろうか?
 それは誰にも・・・、神すら知り得ぬ宇宙の神秘で予測出来ぬ事であった。

 表面上は心配する事は無にもなかった。太陽に吸い込まれた原始星と言われる新星の卵は、普通より多少大きな磁気嵐を太陽に引き起こしただけだった。
 だがそれは地球からでも観測できる程の大きな磁気嵐だった。新星の激突点は大きな紅蓮の炎を漆黒の闇に吹上げた。
 其の地点は黒点が大きく広がり、その黒点は地球からもはっきりと観測できた。
 アメリカの航空宇宙局NASAは、太陽の磁気嵐の為に放送用の電波などに、電波障害が発生する可能性があるので注意が必要との警報を発した。飛行機などの通信にも電波障
害が心配されると付け加えられたが、一般の人々の生活に何ら支障は発生しなかった。
 紫外線が少し強くなるので(日光浴の時間に注意してください)と、言うテレビニュースが流れただけだった。しかし、多少の異変は一部の地域で感じられた。
 北極圏に暮らす人々は、季節外れのオーロラの発生に驚いた。
其の余りにも神秘的な美しさに、心を奪われはしたが、今迄に見た事も無い美しさだけに、一抹の不安は拭い去り切れなかった。
 人々の気づかぬ処で密かに、世界各地で急激な天候異変が発生し始めていた。
 誰も気がつきはしなかったが、太陽に飛び込んだ原始星が引き起こした、時空の歪みが生じていたのだった。それに地球上では誰も気づいた者はいなかった。


 四人の男女がそれぞれに違う場所から飛行機に乗り、目的地に旅立つところであった。
 国際空港が持つ特有の各国の言葉が入り混じった、忙しげなざわめきが空港ターミナルビルを支配していた。
 其のざわめきの中、フランスのパリ、シャルルドゴール国際空港では、甘い囁きにも似た語り口のフランス語で、一四時三〇分発エール・フランス航空二〇九便の搭乗アナンスが始まった。
 斎藤真紀は読みかけの最新号の科学雑誌サイエンス誌を閉じて、待合室のソファから立ち上がると、ゆっくりと前を歩む教授の後から、青い目をした金髪の小柄なパリジェンヌが微笑むチェックイン・カウンターに向かった。
 世界考古学学会にのぞむ教授の助手として、ニューヨークに向かう旅立ちであった。

 一三時三〇分、ロンドンのヒースロー空港の国内線待合室では、ツィードの着古した上着にノーネクタイ、旅慣れた感じで一人の日本人が米語とも何処と無く違う、訛りの無いキングズ・イングリッシュの滑らかな英語に耳を傾けていた
 機体整備の為に出発時間が多少遅れるとのアナウンスを聞き、その男は待合室の奥にあるパブに向かって歩き始めた。
 バーテンダーに向かって其の男は、ワンパイントのギネスビールを注文した。
 それは日本語訛りのブロウクンな英語であったが、相手には通じた様だった。
 無造作に出されたコースターの上に置かれた、スコットランドのハイランド地方を流れる河床を思わせる、黒褐色の液体を初老の男は見つめた。ホイップした卵白の様な白い泡がグラスの中の上の部分を蓋っている。男はこのアイルランド産の黒ビールが大好きだった。日本で飲む味とはだいぶ違っている。しかし、英国のこの味もアイルランドの村で飲む本場の味とは違い、酵母の鮮度の違いとでも言うのだろうか、本場アイランドのパブで飲むギネスが最高だった。独特の薬品臭い味が何とも言えない。
アイルランドでは古代ケルト族の昔から、薬として飲食されたのも頷ける。男は眼を細めてギネスを口に運んだ。初老の男は高木あきら。旅行と歴史関係を連載する雑誌記者で今回の旅はスコットランドのシェットランド諸島、ラーウイックの町から南下する、島の古代遺跡に向かうべく国内線乗り換えの為に待機していた。

 降り注ぐ灼熱の太陽の下で、カリブ海独特の軽やかなレェーゲの音楽が、潮風に乗り空港に到着した観光客を歓迎していた。それを横目に見ながら、一人のスタイル抜群の若い女性が滑走路に影落とし、空港の端に駐機しているセスナ機に向かって、颯爽と生暖かいそよ風を黒髪に受けて歩いて行く。
 到着機から降り立った何人かの男性観光客から、口笛が其の女性に向けて投げかけられた。女性は観光客に向かって、サングラスに隠された顔から妖艶な微笑みが返された。
 観光客は誰一人として、日本人だと気づいた人はいなかっただろう。
 神崎メグミは現在、世界的なトップ・モデルとして活躍している。今回の仕事は日本を代表する旅行会社の来年のカレンダー撮影だった。仕事も天候に恵まれて無事終わり、メグミはレエゲの軽やかな調べに送られて、トランジットの為にカリブ海の小島より、マイアミの国際空港に飛び立つセスナ機のタラップを登ろうとしていた。
 
 杉浦英一は徹夜明けの眠い目を擦りながら、機内に乗り込んだら真っ先に寝ようと心に決めていた。今にも閉じてしまいそうな目蓋を必死になって見開き、襲い来る激しい睡魔と戦っていた。杉浦は一刻も早く機内に入り眠りにつきたかった。
 出発を待つ出発ロビーの人々は、ヨーロッパへの旅立ちを前に抑えきれない興奮を漂わせ、華やいだ雰囲気が感じられたが夢の中の出来事のように感じていた。夢現の中で杉浦英一は搭乗アナンスを今か今かと心待ちにしていた
成田の国際空港より日本航空三〇二便、二二時三〇分発、オランダのスキポール空港まで、北極圏越えの長旅に向かうべく疲れた様子で、杉浦は出発ロビーの椅子に辛うじて座っていた。
 「日本航空三〇二便、ご搭乗のお客様は・・・」 
待ちわびた搭乗アナウンスがやっと始まった。

 パリ、ロンドン、カリブ海、成田と世界の各地の飛行場で、四人の日本人の男女は、それぞれの目的地に向かうべく、乗客待合室やパブと場所はそれぞれ違っていたが、飛行機の出発時間を待っていた。各自乗る飛行機会社も、目的地も違っていたが不思議な事に共通点があった。其れは同日の同時刻出発と言う他に、もう一つの偶然とも言うべき奇妙な共通点があった。其は偶然の事であったが四人の座った座席ナンバーが、E-10と言う番号の一致であった。
 それは飛行機の中とは言え、空中を移動する乗物の限られた一つの狭い、小さな個人の座席空間だった。

(つづく)



                                ☆ガラスのこと☆
 
 12月30日、大掃除のとき、家内のカーチャの母親タマーラの遺品である日本のドーナツ盤が出てきました。いしだあゆみ『白いしあわせ』、五木ひろし『この恋いただきます』、飛柿マチカ『他人同士』、山本リンダ『行きずりの二人』、加藤登紀子『美しき五月のパリ/日暮れにうたう歌』(これはジャケットのみ)・・・ 。タマーラが好きだった越路吹雪の『サン・トワ・マミー』を修理したソ連製プレーヤーで聴いていたら、台所でがっしゃーんという音がしました。カーチャが窓を掃除しようとして内側の窓を手まえに開けたとたん、二重窓の小窓のところにのせていたホーローの漬け物入れが落っこちて、窓ガラスが割れたのでした。カーチャがふと母を思い出した一瞬の出来事でした。割れたのが内側の窓ガラスでなによりです。外側だったらどんなに寒いことでしょう。ロシヤは元日から5日までが正月休みとなって、この新春は7日のクリスマスの休日や振り替え休日を含めて10日までずっと休みでしたが、ガラスは年明けに買って嵌めることにして、とりあえずサランラップを張りました。だから、凍てついた空にうかぶ今夜の月が窓越しに心地よくゆがんで見えたのは、飲みすぎのせいではないのです。(編集子)


                                   
☆新聞拾い読み☆

                              コーヒーを飲めば、ガンは怖くない!

 医者たちは私たちにコーヒーの害を説いています。コーヒーは心臓に悪く血圧を上げるので飲むべきでない、と。ところが、この飲物にはいい面もあるのでした。日本の研究者たちは、1日2杯のコーヒーが肝臓ガン発症のリスクを大幅に抑えることができることを究明しました。ツジ・イチロウ教授をチーフとする仙台市にある東北大学の学者たちは、13年間研究を行いました。1984年から1997年にかけて、専門家たちは、さまざまな職業および習慣の40歳以上の6万1千人を対象に調査をつづけました。そのほか、学者のチームは、調査の対象者の年齢および性別に関する資料を分析しました。肝臓ガンはまったくコーヒーを飲まない人に発生しやすいことが、かなりすみやかに突き止められました。調査の結果、専門家たちは、1日2杯以上コーヒーを飲む人の疾病発症の確率は、まったく飲まない人のそれを100とした場合58%、1日一杯以下の人のそれは71%、とのことです。肝臓ガン発症の傾向は、かつて肝臓に問題があった人にかなり強く、また、60歳以上の人およびヘビースモーカーも、リスクのグループに含まれました。しかも、煙草を今も吸い続けているかとうに止めたかは関係ないとのことです。コーヒーのいい面が明らかにされたものの、ツジ教授は、コーヒーは砂糖を入れずに飲むべきである点を指摘しました。《コーヒーに砂糖を入れすぎると、まったくいいことはない》からだそうです。日本の専門家たちには、今のところ、肝臓ガンの進行を抑えるコーヒーに含まれる成分がなんであるかは分かっていません。けれども、動物へのテストから、コーヒー豆に含まれる塩素性の酸がそうした効能をそなえている可能性のあることが、分かっています。           

マリーヤ・ウスマーノヴァ記者(沿アムール報知20050127)


                            "ダリアヴィア"の事務所が東京に開設される

 近く東京に会社"ダリアヴィア"の事務所が開設されます。ハバーロフスク地方政府報道係で明らかにされたところでは、最近まで同社は新潟市にひとつだけ事務所を構えていました。東京事務所に関する合意は、最近の"ダリアヴィア"の代表団の兵庫県訪問および藤本和弘副知事と会見の際に達せられました。ハバーロフスク地方知事政府・国際関係国家儀典局国家儀典課長のアレクサーンドル・マサーリツェフ氏は、首都の空港の幹部と、2005年7月から9月にかけての現代的な飛行機Tu-214でのハバーロフスク・関西空港間の週2便の直行便の運行に関する事前の合意が達せられた、と語りました。

"ヴォストーク・メディア" (ゾロトーイ・ローグ20041221)


                              鉄道員たち、レーナ河に挑戦する予定

 連邦鉄道運輸局長のミハイール・アクーロフ氏は、"鉄道線ベルカキート-トムモート-ヤクーツク建設の面での緊急措置に関する"ロシヤ連邦政府の決定の実際的実現の問題に関する会議を行いました。会議では、とくに、この鉄道支線のヤクーツクまでの建設の期間および可能性が協議されました。そのためには、建設予定地の川幅がおよそ3キロメートルのレーナ川に架かる橋の建設が必要です。共和国サハ(ヤクーチヤ)は、2006年にはこのプロジェクトの実現に着手する予定です。共和国サハ(ヤクーチヤ)のヴラヂーミル・チレノフ運輸・通信・情報化相の考えでは、ケルデムまでの鉄道線の建設の完了によって、現在年間180億ルーブリと評価されている同共和国への物資の搬入費を大幅に削減することができます。さらに、橋の建設および鉄道支線のヤクーツクまでの延長によって、ヤクーツクの首都ヤクーチヤとの直接の鉄道連絡の確保というきわめて重要な社会的課題の解決が可能となります。

"ヴォストークメディア" (ゾロトーイ・ローグ20041228)


                           チェーホフの著書"サハリーン島"の出版110周年

 サハリーンにおけるチェーホフ・デイズ開催のプログラムが、イヴァーン・マラーホフ・サハリーン州知事によって承認されました。このイヴェントは、アントーン・チェーホフの著書"サハリーン島"出版110周年に時を合わせて催されるものです。プログラムには、"円卓会議"、読者の会議、展覧会、クイズ、ヴィデオ講習会"チェーホフと映画"その他の催しが含まれています。

"ヴォストーク・メディア" (ゾロトーイ・ローグ20040118)

ユージノサハリーンスクのホームレスの転宅
 ユージノサハリーンスク市に、住所不定の人たちのための宿泊所が開設されました。
 この宿泊所は、35人収容でき、滞在期限は10日間。この間に、社会施設の職員たちは、書類を入手し、医療援助を施し、仕事のことでサポートし、必要に場合には老人ホームや身障者施設への入所の世話をするなど、ホームレスの人たちの多くの問題の解決に努めます。宿泊が10日を超えると、有料となります。                    

"ヴォストーク・メディア" (ゾロトーイ・ローグ20041228)


                                  《マイホーム》のためのお金

 ハバーロフスク地方政府報道係が発表したところでは、1月13日、プロジェクト《マイホーム》の実現の面での協力に関する株式会社《みちのく銀行》との一般協定の調印式が行われました。ハバーロフスク地方政府の側からは、ハバーロフスク地方政府第一副議長兼経済発展対外協力相のアレクサーンドル・レヴィンターリ氏が、《みちのく銀行》の側からは、原田和夫頭取が、文書に調印しました。調印された協定は、住宅ローンの発展の面での同地方と《みちのく銀行》の協力の基本的な原則およぞ条件を規定するものです。プロジェクトの参加者たちには、標準的な融資の条件で採用されている利率より低い利率が設定されます。地方政府は、建設される住宅の担保の国家登録までの期間、銀行への融資返済の保証人となります。アレクサーンドル・レヴィンターリ氏は、《調印された協定は、枠組み協定です。それにつづいて、近い将来、地方政府と《みちのく銀行》のあいだの協力の方向を詳らかにし、プロジェクト《マイホーム》実現のメカニズムを具体化する文書が調印されます》と述べました。

(太平洋の星20050114)         

                        
                                     衷心から

 先日、ハバーロフスクの姉妹都市、韓国のプチョン(富川)で複雑な心臓手術を受けた3人の子供が、ハバーロフスクに戻りました。費用は無料、プチョンの医師たちの言わばクリスマスプレゼントでした。こうした善意の行為は初めてではありません。協力は、2004年6月24日に調印されたハバーロフスクとプチョンの姉妹関係の発展に関する協定の枠内で行なわれています。今回、プチョン市はと韓国児童保護基金は、或る病院で、心臓血管系の疾患に苦しむ3人のハバーロフスクっ子の治療を行いました。手術代は、病気の重さによって、1万5千から3万ドルでした。プチョン市は、ロシヤのサンタクロース、マロースおじいさんの役をすすんで演じ、健康な生活への奇跡的な帰還をハバーロフスクの子供たちにプレゼントしたと言えましょう。プチョン市長は、ハバーロフスクのソコローフ市長に、プログラムの継続に対する確信を表した書簡を送りました。

ダニーラ・ゼムリャーク(太平洋の星20041231)
 
                    
                                 素晴らしい4人+ゴールキーパー

 ハバーロフスクの《ゴールデン・アムール》の5人の選手が、日本の釧路市で1月22、23の両日催されるAHLアジアアイスホッケーリーグの祭典《オールスターゲーム2005》に出場します。今のところ、ゲームに出場するオールスターの完全なリストは公表されていませんが、ハバーロフスクのプレーヤー、ゴールキーパーのセルゲーイ・オグレーシニコフ、バックスのニキータ・ダニーロフとミハイール・ペレヤースロフ、フォワードのセルゲーイ・キヤーイキンとヂェニース・ポルーニンがAHL本部からすでに正式の招待を受けています。        

イーゴリ・サラーンチン記者(太平洋の星20050106)

                                    去っていき、戻ってくる・・・

 去年、ユダヤ自治州から、273人のロシヤ市民が、国外へ移住しました。これは2003年より20人多い、とユダヤ自治州内務局旅券査証課で《ヴォストーク・メディア》に明らかにされました。
 これまでと同様、移住者の大部分はイスラエルへ移ります。1990年代には、極東から中東へ家族で移住していたとすれば、現在は、親類と合流するために単独で行ったり、子供たちが様々なプログラムに則って勉学のために向かったりするケースが多くなっています。多くの移住者は、単に帰還者各人を対象とした財政援助を受けたり、一、二年、稼いでから戻るために、去っていきます。ちなみに、去年は、179人がイスラエルからユダヤ自治州に戻ってきました。

(沿アムール報知20050126)


                              ハバーロフスクの芸術家、日本で入賞する

 80カ国の芸術家が日本の兵庫県の国際絵画コンクールにじぶんの作品を出展しました。厳しい審査員たちは、8000点のなかから、神戸市芸術ミュージアムのコレクションに含まれることになる11点のみを選抜しました。ハバーロフスクの芸術家、アンドレーイ・ブラジノーフさんが、このコンクールの2位および《パーフェクション》という賞を獲得しました。ブラジノーフさんの《エクスジステンツィヤ》という2枚折の絵は、あらゆる点から判断して、その人生肯定の力で、いくつかの国の芸術通たちの好みにマッチしたようです。コンクールのテーマは、再生でした。その美術館に現在ハバーロフスクの芸術家の作品が展示されている神戸市は、10年前に震災を被りました。それゆえ、再生というテーマは、神戸の人々にとくに切実なものなのです。ちなみに、コンクールで入賞した作品の展覧会には、日本の天皇陛下が訪れました。ハバーロフスクの芸術家の勝利は、ロシヤの才能たちが自国でよりも国外でより頻繁により早く認められることを、改めて裏付けるものでした。とはいえ、アンドレーイ・ブラジノーフさんに関していえば、氏にとってこれは2度目の日本の発見。かつて、氏は、ハバーロフスクの芸術家、V.ドロズドーフさんおよびA.ネージンスキイさんとともに、隣国の権威ある芸術フェスティヴァルに参加しています。                        
S.ザーレフ(太平洋の星20050128)


                 ☆河原和尊さん(当日本人会OB)の俳句作品 その5☆

俳句エチュード       一行

 今年は正月からあわただしく、サハリンから帰国後、静岡に出かけ、札幌に戻って、すぐさまモスクワに出張した。その後札幌に戻り、引越荷物をまとめ、2月から入社した会社の研修を静岡で受けた。静岡では、徳川家康の浜松城や豊田佐吉生家博物館を訪問する余裕はあった。浜名湖周辺は風が強い。3月1日からモスクワに単身赴任。

歳長けてまた越ゆべしと思いきや 命なりけり小夜の中山  西行

白き地にまたふたたびの道はるか

点点と白き野に散る古狼の血

マリーナの赤き実が焼く冬景色

ぼんぼりの白き浮遊の雪明り

飛ぶ窓に心残りて雪光る

海広く夢雲高く遠江(とうとうみ)

杜ゆすり風吹き抜ける佐吉山  

春時雨、枯れ木の枝にも露の花

昨年(こぞ)の花、心に満ちて春は来る

小雪舞いさりゆく冬の名残歌


      ☆ラヂオのある暮らし☆

   
◎「NHKワールド・ラジオ日本」放送時間・周波数表(2005年3月28日〜2005年10月30日)

   <東南アジア向け>
     日本時間 kHz
日本語 11.00-12.00 11860
11.00-14.00 17810
16.00-18.00 17860
16.00-19.00 11740
18.00-01.00 11815
01.00-04.00 7200
05.00-07.00 11665
05.00-09.00 13680
   
<アジア大陸向け>
日本時間 kHz
日本語 11.00-12.00 17845
11.00-14.00 15195
16.00-17.00 15195
6145
6165
17.00-02.00 9750
01.00-04.00 6035
05.00-06.00 6165
05.00-09.00 11910

06.00-07.00 9560

ロシア語12.30-13.00 17845
14.30-15.00 11715
     11760
17.00-17.30 6145
6165
22.30-23.00 6190
04.00-04.20 5955

◎ロシヤ国営ラヂオ「ロシヤの声」日本語放送・周波数表(2005年3月27日〜2005年10月29日)
日本時間 21.00-22.00 中波630 720 短波 5905 7315
  22.00-23.00 中波630 720 短波 5905 7315 7355(kHz)
 * HPアドレスは、http://www.vor.ru 。21.00-22.00(夏時間のあいだ)の放送は、インターネットでもお聴き戴けます。
 *リスナーズクラブ『日露友の会・ペーチカ』http://www003.upp.so-net.ne.jp/PECHIKA04-10-29/


* ハバロフスク支局では番組
「シベリヤ銀河ステーション」のインタヴューコーナーに友情出演してくださる方を募集しております。スタヂオ見学もどうぞお気軽に。(21-41-07か32-45-46/ 岡田)

【編集後記】

 
「六花」春号の発行がたいへん遅れまして申し訳ございませんでした。新聞情報はすっかり古くなってしまいましたが、どうかご了承ください。今号から、総領事公邸料理人・山下さんのご厚意により、文芸作品を連載させていただけることになりました。続きをどうぞお楽しみに! なお、次号の原稿の締切りは、2005年6月末日です。イヴェント&暮らしの情報、離任着任メッセージ、詩歌やエッセイなどお気軽に岡田までお寄せください
(職場32-45-46自宅п彦ax21-41-07/メール
okada@pop.redcom.ru)。

どうぞ宜しくお願いいたします。 


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